コーポレートガバナンスとは・その背景
コーポレートガバナンスとは、
日本語で企業統治と訳されています。
企業価値(=株主価値)維持増大のための経営が成されているか、
モニタリング(監視)する仕組みのことです。
1980年代米国では、経営の監督・執行の分離を柱とした
企業統治の議論が活発になり、そのあり方が模索されていました。
日本でもバブル崩壊以降、相次ぐ企業の不祥事を機に、
コーポレートガバナンスの考え方が取り上げられるように
なってきました。
それまでの日本は、会社内部の昇進者から取締役会が構成され、
監査役も会社のOBという場合がほとんどでした。
取締役は株主総会で選任されるのですが、
広く分散した一般株主は影響力が乏しく、
株の持ち合いによる安定株主はいわゆる物言わぬ株主で、
チェック機能が働いているとはとても言えず、
馴れ合いの温床となっていたのです。
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執行者と監督者が同一という取締役会の構成や、
外部からの圧力を受け流してしまう安定株主の存在は、
収益性の低い非効率的な事業に投資するという、
インサイダーコントロールの危険性をはらんでいます。
そういったモラルの低下を抑制していたのが
メインバンクによる監視でした。
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しかしこの日本的な統治構造も、80年代半ばから
少しずつ変化を見せることになります。
規制緩和が段階的に進むにつれ、
優良企業は社債による資金調達にシフトし始めました。
一方、業績が振るわず、倒産リスクを抱える企業は
銀行から借り入れるより他なく、企業の分化が進み、
メインバンクがその力を発揮できる企業の範囲が狭まった結果、
余剰資金の貸し出し先が、不動産、建設、ノンバンクに
過剰に向けられることになりました。
90年代に入り、バブルが崩壊し株価は低迷。
住専問題や銀行の不良債権問題も明るみになり、
97年末の金融危機以降、銀行株はますます価値を下げ、
企業にとっても、連結財務諸表制度の導入や、
時価会計導入は、保有銀行株の処分を
再考せざるを得なくなりました。
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企業・金融機関ともに
株の持ち合いを続ける理由がなくなり、
系列の解消も進み、メインバンク制度や株式の持ち合い、
終身雇用制度などを特徴とした日本企業のあり方は、
変貌を余儀なくされるようになってきたのです。
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こうして安定株式も減少していく中、
シェアを伸ばしてきたのが、年金運用等を行う
機関投資家と、世界的な国際分散投資の流れを受けた
海外機関投資家です。
金融ビッグバンによる株式売買委託手数料の自由化など、
金融規制緩和が背景にあったことも影響しているでしょう。
外国人株主の増加は会社経営者に、ROE(株主資本利益率)
を重視した経営を迫り、業績や株価の低迷が続いた場合、
ウォールストリートルールの実行も辞さないといった、
厳しい姿勢を求め、その結果、経営のチェック体制が強化され
経営改善に向けた努力が進められることになりました。
※ウォールストリートルールとは、
投資収益率の低い企業を直ちに売却するということです。
中でも、近い将来の高齢化社会到来や
確定拠出年金(401k)の導入を考えると、
今後も増えていく年金を運用する機関投資家に、
「物言う株主」として、
コーポレートガバナンスの役割を果たして欲しい
という期待が高まっています。
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